~オーストラリア・オール アビリティズ プレイグラウンドより~
2007年にクイーンズランド州が始めた、「オール アビリティズ プレイグラウンド プロジェクト Queensland All Abilities Playground Project」が約4年がかりで完了し、同州には障害の有無を問わないすべての子どものための公園が16箇所誕生しました!(プロジェクトの概要は、■「UD公園のヒント・海外編No.10」をご覧下さい。)
そこで今回は、クイーンズランド州第二の都市ケアンズから、オープンしたての「オール アビリティズ プレイグラウンド」を2箇所、レポートしましょう。
まずはMossmanという小さな町のGeorge Davis Parkから。
この辺りは、グレートバリアリーフの海とデインツリーの熱帯雨林という2つの美しい世界遺産を有する自然豊かな場所で、人口密度はあまり高くありません。こうした地域に誰もが利用できる公園をつくることは、地元の子どもたちに充実した遊びの機会を提供するだけでなく、離れて住む住民同士のつながりを生むという大きな意義がありました。地域の人々は、公園の計画段階からワークショップや討論会などに参加をし、公園予定地では資金集めのためのバーベキューイベントも開催されたそうです。
ちなみに看板にある「BUBU KinKari」は、地元アボリジニの言葉で「Playground」を意味するそうです。民族や文化の多様性も尊重する姿勢は、さすがですね。
訪れたのは平日の正午頃ですが、公園はおおぜいの親子連れで賑わっています。中にお父さんたちの姿も見受けられるのは、ちょうどクリスマスから年末にかけてのホリデーシーズンだからかもしれません。(ちなみに写真は、後日、人が少ない雨上がりの早朝に撮影したものと合わせてご紹介していきます。)

さらに門を入ると、カラフルなイラストがたくさん並んだボードがお出迎え(右の写真)。
140枚に上るこれらのイラストは、公園づくりのために地元の3つの学校の生徒たちが、「みんなで遊ぶ」というコンセプトから自由に描いたイメージです。友だちと楽しく遊べる夢の遊具から、様々な生き物、ハートや虹、地球や太陽など、子どもたちの新しい公園に対する期待の大きさやワクワク感が伝わります。

日本と逆でオーストラリアは今が夏なので、その日差しは特に厳しいのですが、シェードの陰に入るととっても涼しい! これなら子どもも長時間遊べますし、見守る大人たちも快適です。

右の写真の、高い背もたれとシートベルトの付いたブランコにも、次から次へと乗り手がやって来ます。その多くが小さな子どもたち。従来型のブランコにはまだ乗れない彼らも、これならかなり大きな揺れまでOKです。ブランコが揺れる度に大興奮の喜びように、シートを押しているお母さんも声を上げて笑っています。
さらにダイナミックな遊びができるのはこちら!

一方には棒の下に小さな円い座が付いた一般的なもの、もう一方には先ほどのブランコと同じ背もたれ付きシートが吊られています。
そもそも背もたれのあるブランコシートといえば、大きくて硬いポリエチレン成型のものが多いのですが、こちらの座席は軽くて軟らかい強化ゴム製。握りバーとなる金属パイプとともにデザインが洗練されていて、座り心地も上々です!
ただ、シェードのない炎天下では黒い座席が熱くなっている場合もあり注意が必要。しかしどうやらこの日、その心配はなさそうです。なにしろ『大』人気のため、常にだれかが乗っているのです!
シートに座り、お父さんやお母さんに思いっきり押してもらった子どもは、” Wheeeee! ”という歓声とともに風を切って滑空していきます。ケーブルの終点で上の滑車が止まると、座席は惰性でブーンと勢いよく振り上がるのですが、子どもはハイバックのシートに肩から腰をしっかり固定されているので大丈夫。
普通のターザンロープでは味わえないスリリングな体験に、子どもたちはもう夢中です。
ちなみに地面は、ターザンロープエリアもブランコエリアも、遊具へ乗り降りをする場所のみ車いすや歩行器もアクセスしやすいゴムチップ舗装、それ以外は砂となっていました。また、遊び場の通路はカラフルなコンクリートで、他は芝やウッドチップと、場所によって素材の使い分けがされています。


子どもたちが様々な感覚や能力を総動員して楽しめるよう、考慮されているんですね。特に水遊びテーブルのコーナーは、よちよち歩きの子どもたちに人気でした。
おや、あちらから聞こえてくる笑い声は…?

残念ながら、写真ではただのテーブルとベンチにみんなが集まっているだけのように見えますが・・・実は回っています!
これは、車いすのまま乗って遊べるようにつくられた回転遊具。
以前、イギリスから同様の遊具で、扉を開け閉めして乗るタイプのものを紹介しましたが(■「UD公園のヒント・海外編No.12」)、さてこちらの場合、車いすユーザーはどのようにして回転盤に乗り込むのでしょう?

ジャーン! 車いすの入るスペースを囲うバーは、中央に向かってスーッと弧を描くように持ち上げることができます。車のガルウィングドアの動きに似ていますね。この状態で遊具に乗り込み、バーを元の位置に下ろせばセット完了。回転中に車いすが外に投げ出される心配はありません。
バーの上げ下げには、幼い子どもが簡単に動かせないくらいの重さ(負荷)がありますし、持ち上げる途中で手を離してもバーはその位置で止まるため、ガシャンと落ちてくるという危険もなし。回転のスピードも適度に抑えられ、周囲の地面はゴムチップ舗装です。
何より感心するのは、使い方の説明書きがいらないシンプルな操作性と、「車いす用」という特殊性を感じさせないデザイン。どちらもユニバーサルデザインの肝ですね。
だれもが当たり前のように乗り込んで、いっしょに楽しめるこの小さなメリーゴーランドは、たくさんの子どもたちにとってお気に入りの場所になっていました。
この遊具は別の「オール アビリティズ プレイグラウンド」にも導入されているのですが、そのうちの一つの公園づくりに関わったある女性のコメントをご紹介します。
「私は、16歳と17歳の子どもをもつ母親で、電動車いすを利用して24年になります。“メリーゴーランド”には、本当に長い間乗ったことがありませんでした。その私が、知り合いの車いすユーザーといっしょに、この回転遊具に乗って何度も何度も何度も回ったんです。とても快適で二人とも大喜び。『もっと速く、もっと速く』ってね。私たちは、自分の車いすから降ろされることなく何かに乗れたことが嬉しかったのです。そしてこの歳になって、回転遊具で遊べたということが。『すべての』人が利用できる一つの遊具によって、自分が遊ぶ機会を得られたことに、私たちは大喜びでした」

続いてこちらには、ちょっとした竹林で仕切られた迷路のようなエリアがあります。
置かれているのは、木とステンレスでつくられた美しい遊具。どれも音が鳴るんですよ! 長いベンチに座ると座面が沈み、内部で弦が掻き鳴らされたり、柱に付いた円盤を回すと中でたくさんの粒粒が複雑に転がってシャラシャラ、ジャラジャラと金属的な音を出したり・・・。
これらの遊具をつくったのは、シドニー在住の作曲家&音の立体芸術家であるKim Bowmanさんです。ご自身のウェブサイトの作品紹介ページ(
Kim Bowmanさんの作品集:英語 )の画面下に並んでいるリストをクリックしていくと、彼の音の芸術作品を写真や動画で見たり聞いたりできます。

Sonic Bench”

“Rain Wheel”

“Marimba”

“Marimba”
例えば上のマリンバ。楽器を支える柱を曲げることで、膝下のクリアランスが確保され、車いすがアクセスしやすくなっています。鍵盤の面も手前に傾いているので、背の低い子どもたちも演奏しやすいですよね。
ちなみに鍵盤は8つありますが、これ、「ドレミファソラシド」ではなく、「ファ」と「シ」が抜けた「ソラドレミソラド」の五音音階です。この音階は、古代から世界各地で民謡や童謡に用いられてきました。日本でおなじみの「チューリップ」「ぞうさん」「めだかの学校」「赤とんぼ」もみんなこれで弾けちゃいますし、まったくでたらめに弾いても何となく曲になりやすいという特性をもった音階です。
あらゆる子どもたちが、遊びを通して自然に音や音楽に親しめる、そんな空間づくりがされているんですね。実際、子どもたちは、一人でふらりと、あるいは友だちといっしょにここへやってきては、自分たちだけの音を生き生きと鳴らして楽しんでいました。
最後にこの公園から、もう一つ優れた点をご紹介しましょう。それは、遊び場の整備前からあった既存の施設だそうですが、こちら!

遊具での遊びを卒業した子どもたちが、地域の人に見守られながら、自分たちで自由に利用できる場所が用意されていることは貴重です。スケートパークに立てられた看板には、「Community Skatepark」「ここはあなたたちの施設です。楽しんで!」と書かれていました。
さあ、George Davis Parkの紹介はここまで。今度は、もう一つの「オール アビリティズ プレイグラウンド」に向かうとしましょう。
その前にちょっとクイズを・・・。

答えは次回のレポートで。どうぞお楽しみに!

(公園の敷地内にある、地域特産のサトウキビと人をモチーフにした巨大な造形作品と、
壁いっぱいに美しい熱帯雨林の景観が描かれたトイレ)

