公園を知る「国内事例」

No.02 「UD」+「手作り」+「遊び心」

静岡県富士市「富士山こどもの国」

 富士山の裾野に位置する「富士山こどもの国」は、キャンプ場などの宿泊施設を備え、草原や森、池など広大な自然に親しみながら遊べる県営公園として1999年にオープンしました。(現在は指定管理者として民間の企業が運営にあたっています。)

 公園を計画する際、「障害者はもちろんお年寄りまでだれもが楽しめるように」とユニバーサルデザイン(UD)の考えが採用され、有識者や障害者など多くの人が整備に関わったそうです。そうして生まれた細やかな配慮の数々を、園内のいたる所で見つけることができます。さっそくご紹介しましょう。

写真:園路の道標

 園路の途中や分岐点には、大きな岩や石を積み上げて作った塚が立っています。その表面には、古代の壁画を思わせる絵や矢印が彫り込まれていて、見ても触っても楽しめる道標になっています。(背景に写っているのは富士山!)

写真:触地図つきの案内板

 園内の説明や地図が書かれた案内板には透明のプラスチックカバーがあり、そこに点字による説明と凹凸の付いた触地図が表示されています。また案内板の前の地面や階段の上と下の部分は赤茶色に塗られ、白っぽい玉石が丁寧に並べて埋め込まれています。これはいわゆる点字ブロックの役割をしているのですが、玉石の描くきれいな模様はあらゆる人をさりげなく引きつけます。

写真:歩道を横切る、玉石で作られた点字ブロック

 この玉石で作られた点字ブロックは、広大な園内を巡る主要な歩道の分岐点にも、道を端から端まで横断する形で敷かれています。車いすもゆとりをもってすれ違えるよう歩道の幅はとても広いのですが、この長い点字ブロックのおかげで視覚に障害のある人が歩道のどの位置を歩いていても「おっと、ここが分岐点だな」と気付くことができます。
 ただ、2箇所だけ玉石がない切れ目の部分がありますね。車いすやベビーカーがスムーズに通れるようにとの配慮でしょう。

写真:園路の分かれ道

 ここも小さな分かれ道です。
 向かって右はアスファルトの歩道。左は岩だらけの小道を登っていくチャレンジルートです。手前にあるモザイクタイルで飾られた半球状のオブジェは、霧が深い時に人々を誘導する照明になるそうです。たとえその機能を知らなくても、子どもたちは「あっ、きれいなのここにもあった!」と駆け寄り、触っていきます。(モザイクタイルは、方角を示したり触地図風にデザインされたりしてします。)

 さて、その左に立つポールの上に付いている黄色い円筒状のものは何でしょう?

写真:受付にあるピクトサインの説明版

 円筒のてっぺんには凹凸のあるピクトサイン(絵による案内表示)がついていました。園内の様々な場所が独自の絵文字で示されていて、子どもにとっても理解しやすく楽しいしかけです。また円筒の側面についている丸い凸印は、その場所がある方向を指しています。

写真:触地図やピクトサインを使った動物広場の案内板

 園内の主要な施設やポイント、トイレの入り口などには木彫りの案内板が表示されています。凹凸のついた触地図に加え、先ほどのピクトサインや点字が併用されている所もあり、とても分かりやすくなっています。この「どうぶつひろば」の案内板には馬の蹄鉄も飾られていますね。

 この他にも次のような工夫があります。

●やや起伏がある広大な園内ですが、車いすでも利用しやすいよう、主要な園路は勾配を5%以下に抑え、50メートル間隔で休憩スペースが設けられています。

●2つのルートを走る「こどもの国列車」(トラムカー)は、座席の間隔が一部広くなっていて、車いすやベビーカーのまま乗り込むことができます。

●「水の国」では子どもたちが池の中に入って遊べる場所がありますが、ここにもスロープが設けられており、水陸両用の車いすも貸出されています。

  などなど・・・

 一方で、自然を存分に活かした公園ということもあり、溶岩の丘の遊び場や草原に作られた遺跡風の迷路など、「楽しそうだけど車いすに乗っている子どもは近づけない」という場所もあります。

 それでも「手作り」で「遊び心」のある「細やかなUD」は、景観と調和しながら、子どもの想像力を刺激し、あらゆる人にとって親しみやすい場づくりに貢献できることを教えてくれている気がします。

 UDのユニークなアイデアに触れられる「富士山こどもの国」をご紹介しました。