「UD公園のヒント・国内編No.11」
様々な挑戦、いろいろな発見(後編)
~兵庫県淡路市「淡路島 国営明石海峡公園」~
~兵庫県淡路市「淡路島 国営明石海峡公園」~
淡路島にある国営明石海峡公園は、誰もが利用しやすいよう園内に様々な工夫が凝らされています。2004年にオープンした遊び場「夢っこランド」にも、ユニークな工夫がいろいろ!
そこで前回のレポートでは、「夢っこランド」の「風エリア」から、「花エリア」の空中回廊までをご紹介しました。今日はその続きです。

ここは大部分が屋根と壁に覆われた全天候型の遊び場で、その真ん中を貫くような形で回廊が続いています。回廊は急傾斜のスリリングな滑り台のスタート地点や、建物の壁にそってめぐらされた高い通路と遊びのルートにもアクセスしているのですが、その中におもしろいルートを発見!

じつはこのルート、車いすに乗る子ども(&大人)ならではの楽しみ方もあるのです。
波から波へ、車いすをうまく乗りこなせば、加速と減速を繰り返して進む小さなジェットコースターに乗っているような気分! 表面に細かい刻みが入った床板は、波を乗り越える車いすのスピード変化に伴って、「ギューン、ギューン」と気持ちのよい音を立てます。
さらに安全に多様な子どもが楽しめるためには、通路とデッキの広さや、波の勾配、また回廊と交差する地点での見通しなどを少し改良するとよさそうです。(たとえば、回廊との交差点には壁があって飛び出してくる子どもが見えないために、出合い頭の事故が起こる可能性があります。)
ともあれこの波乗りルート、地上にあっても楽しめるグッドアイデアかもしれません。

おっと、突然、床が小さく揺れました! ここを通っていく子どもや大人たちの中にも、驚いて「あれ?」と振り返る人が・・・。
じつは通路の途中にあるステンレスの枠で囲まれた四角い床部分が、ちょっとしたシーソーのような仕掛けになっていたのです。この四角いパネルはちょうど中央を支点として、手前と奥がそれぞれ約5センチ傾くようになっています。
つまりパネルの手前側に立つとその足元が5センチ沈み、奥側が5センチ高くなるというわけ。見た目がシンプルなので、何気なく通るとちょっぴり不意を突かれる感はありますが、通路の途中にシーソーとは遊び心のある仕掛けですね。
パネルの周囲にかぶせてある厚いゴムシートのおかげで、動く床板の隙間に小さな子どもが指を挟む心配はありません。また、床が沈むことでできる段差をある程度緩やかにつなぎ、つまずきを軽減するのにも役立っているようです。

今の段差をほんの少し浅くすることと、楽しい遊びのポイントだとわかり、なおかつちょっと立ち止まって安全に通り抜けることを自然に誘導するようなかわいいデザインが期待されます。

ここは「水エリア」です。中でも子どもたちに人気の水遊び場がこちら!

木の形をしたモニュメントから霧状の水が噴き出したり、地面からアーチを描くように細い水の柱がいくつも噴き上がったり・・・。また、離れた的を狙って放水する「ウォーターガン」もありました。そのハンドルやボタンは、車いすからも操作のしやすい高さに付いています。
水遊び場の地面はフラットでゴムチップ舗装も施されているので、裸足で駆け回る子どもにも車いすに乗っている人にも好都合! 子どもたちの歓声が響く楽しい遊び場でした。
このようにユニークな工夫を随所に見ることができる「夢っこランド」。
車いすに乗る子どもも一度スロープを上がれば、空中回廊を通じて広い遊び場の上を自由に渡り歩くことができるという点で、開放感や充実感がありました。
続いて、明石海峡公園内にある多様な利用者のための工夫をいくつかご紹介!

そしてこれらの歩道と芝生の境には、大きな溝や段差がほとんどありません。歩道から寄り道をして咲き乱れるコスモス畑のすぐそばまで近づき、同行者と一緒に花をめでる車いすの方の姿もありました。

右の写真の案内板は、車いすの人も近づきやすいようテーブル状になっていますね。テーブルの上に書かれた公園案内は、点字や触地図付きです。また、案内板の正面にある電光掲示板では、園内のおすすめスポットや公園利用の注意事項などの文字情報が流れていました。
じつはこの電光掲示板、本領を発揮するのは臨時のお知らせがある時や緊急時です。聴覚に障害のある方から、「非常事態が起こった際、避難を促す緊急放送が聞こえず自分だけ取り残されてしまうのが怖い」という切実な不安をよく伺います。
聴覚にも視覚にも訴える情報提供のシステム整備は、多様な利用者にとっての安心感につながるでしょう。

案内板には文字(墨字)と点字による説明文が記され、その右にある小さなボタンを押すと同じ文章 が音声で読み上げられました。視覚に障害のある人もない人も、その場所を深く知り、楽しむための手 掛かりを得ることができます。(ちなみに案内板の手前に付けられた赤紫色のバーの一部が窪んでいる のは、ここに白杖やステッキ、傘などを立てかけても倒れないための工夫です。)
ところでこの案内板。誘導パイプもなにもない歩道の脇にさりげなく置かれているケースもあるので すが、これでは視覚に障害のある人が、点字や音声ボタンどころか案内板の存在自体に気付かず、素通 りしてしまうのではないでしょうか?

公園の入り口で借りられる無線のカードをポケットなどに入れて携帯していれば、案内板付近で自動的に音声案内がスタートする仕組みになっていました。試しに歩道の反対側を歩いてみても、案内板から3メートルほどに近づいたところでちゃんと、 「こちらに案内板があります。案内板に向かってお立ち下さい。この暁の庭には…」 と女性の声が流れ始めました。
ただ、その声が周囲に大きく響き渡るので、「園内を静かに散策している他の人のじゃまにならないか気がかり」という感想も出ました。
さらに音声案内は、その場を離れるか、カードのスイッチを切るまで繰り返し流れ続けるため、そこにしばらくとどまって同行者と会話をしたりくつろいだりするには、その都度カードを取り出してスイッチを切る必要があります。これを改善するには、例えば、音声は一度だけ流れることにし、再び聞きたい場合には、カードにポケットの上からでも押せるような大きな押しボタンを付けておいてこれを押す、というような方法もあるでしょう。
いずれにしても、実際の使用の状況では、さまざまなニーズがあることが分かりまし た。
カードによる音声案内システムや電光掲示板は、設備の導入にお金がかかります。大掛かりなスロープや空中回廊などを備えた遊び場にしても、「国営公園だからこその施設」とも言え、子どもたちに身近な街区公園からは縁遠い事例に見えます。
しかしこうした先駆的な実践の中に、小さな公園にもいかせるアイデアがたくさん隠れていることがわかりました。 大切なのは、いろいろなタイプの公園を実際に多くの人が利用する中で、便利さや新たな課題を一つひとつ発見して、次にいかしていくことではないでしょうか。
淡路島から「国営明石海峡公園」をご紹介しました。

