
先輩UD公園からの問いかけ(後編:遊具広場)
〜鳥取県米子市「弓ヶ浜公園」〜
ユニバーサルデザイン(UD)という言葉がまだ一般的ではなかった1998年に、障害の有無に関わらず「みんながともに遊ぶ」ことをコンセプトに作られた、弓ヶ浜公園「みんなの遊具広場」をご紹介します。
この遊具広場を計画する段階で、保育園や幼稚園、小学校、特別支援学校(当時の養護学校)の関係者と保護者への聞き取りや、地域の子どもたちを対象にした遊びのワークショップが行われ、そこから得られた住民の意見が遊具作りにも反映されたそうです。(「みんなの遊具広場」は平成11年度、国土交通省(当時の建設省)より「手づくり郷土賞」を受賞しています。)
それでは、この遊具広場に施されたUDの工夫を探していきましょう!

さて日本海にほど近いこの公園では、遊び場や遊具がそれぞれ「海」「船」「島」などに見立てられています。そして遊具は「くねくねゴッツン船室」(迷路)や、「ふわふわ島」(表面にクッション性がある丘のような遊び場)など、擬態語を含んだ名前が多く付けられています。これは視覚障害児や知的障害児も含め、子どもたちが遊具の特性を認識しやすいようにとの配慮だそうです。

ここは車いすを使っている子どもはもちろん、高い段の砂場に上がった子どもと一緒に遊ぶ車いすのお母さんも想定して作られており、段々畑状の砂場が子どもにとって階段の役割も果たしていることに「なるほど」と納得です。また砂場を高くするとそこは「野良猫たちのトイレ」になりにくく、衛生上の問題解決にも有効とのことです。

ブランコエリアの下には、たっぷりと砂が敷き詰められています。この砂浜のような地面は、海や島をイメージした遊び場の雰囲気にぴったりですし、子どもがブランコから転落した時に衝撃を吸収する役割もあります。
弱点としては、車いすでこのエリアに乗り入れると、タイヤが砂に沈み込んで一人では抜け出せなくなってしまう場合があることと、他のエリアの地面(写真で言うと青いブロック敷きの部分)にもたくさんの砂が上がってしまうことです。こうした固い地面に砂が上がると滑りやすくなるので、公園の管理をされている方が、定期的に砂を掃き戻しておられるそうです。

さあ、この複合遊具にはどんな工夫がされているのでしょうか?

右の写真は、2階のデッキから1階の迷路へとつながるはしごの降り口です。デッキの木の床には金属の円い突起が、点状の点字ブロックのように並んでいます(左の写真の迷路の入り口にも同じ工夫がしてありますね)。きっと視覚障害の子どもを含めたみんなに、「ここが出入り口だよ」とか「転落注意(または頭上注意)」と知らせるための配慮でしょう。

ただし車いすに乗っている子どもがこの最上階に到達するまでには、以下の2つの「協力ポイント」を通る必要があります。

2階のデッキに通じる長いスロープの途中には、床が小さな吊橋のようになってくぼんでいる箇所があります(左の写真)。(ちなみに上から見ると「どこから吊橋か見分けがつきにくい」点と、「その境界部分に6〜8cmの隙間ができている」点は、いずれも床板が年月を経て退色や収縮してしまったことが原因かと思われます。)吊橋自体は、それほど揺れるわけではありませんし、くぼみの深さも最大で10数センチですから車いすでも何とか行けそうにも見えますが・・・無理でした。
車いすのタイヤがくぼみから抜け出すには、吊橋の端の部分の傾斜が急になりすぎることと、そこで懸命にこいでもタイヤがスリップすることが原因で、自分ではここから前にも後ろにも出られません。そこで誰かの助けが必要です。
もう1箇所は3階のデッキに通じる最後の坂です(右の写真)。距離は短いのですが勾配が約35%あるので、車いすスポーツ選手であっても一人で上がることは困難です。ここが2つ目の協力ポイントです。
この2つのポイントは、誰かの手助けがあれば車いすでもクリアできる関門です。急な坂を後ろ向きに下る時だけは、安全のため慎重な介助が必要ですが、そのほかは子どもどうしの助け合いでも乗り越えることができるでしょう。こうしたことをきっかけに関わりが深まるという「良さ」もあるかもしれません。
しかし一方で、普段は車いすで自由自在に駆け回っている活発な子どもまで含めて、「車いす」である限り誰かの助けを借りなければ利用できない遊具というのは、やはり残念な気がします。友だちとの協力ルートだけでなく、車いす利用者が一人でアクセスできるルートが設けられていたなら、さらに多くの子どもが誰にも遠慮せず自分の力を発揮しながら、充実感をもって遊べるのではないでしょうか。
ところで「協力」は、この遊び場の重要なキーワードの一つになっています。開園当初は、障害児を含めた多様な子どもたちが「協力」して遊ぶことを促すための遊具やしかけが設置されていました。しかし特別な意図をもって作られたこれらの遊具のいくつかは、想定外の遊び方をされたことなどが原因で、ほどなく故障したり利用できなくなったりしたそうです。
これはUD公園が実際に様々な人たちに利用される中で、当初作り手側が予想していなかった課題が浮かび上がってきた一例ですが、反対に思わぬ効果が明らかになったり意外な利用者から重宝されているといったケースもあるでしょう。
こうしたことを、今後のUD公園のさらなる「改良」につなげていくにはどうすればよいのでしょうか?
この公園に施された工夫の数々は、完成形のお手本としてではなく、創意と熱意にあふれる作り手からの提案という形で、すべての人に投げかけられているのだと思います。
こうした提案に対して、実際の利用者である多様な子どもたちや大人たちが、感想や意見をたくさんフィードバックしていくことが大切です。
「改良」の鍵を握っているのは作り手と使い手のそれぞれで、両者の鍵がそろって初めてUDはより確かな次の扉を開くことができるのではないでしょうか。
先輩UD公園からの問いかけは、今も続いています。
「こんな工夫をしてみたけど、実際の使い勝手はどう?」
皆さんのご意見はいかがですか?
●先輩UD公園からの問いかけ(前編:公園全体)




