レポート
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「UD公園のヒント・国内編No.06」
諦めない公園
〜広島県庄原市「国営備北丘陵公園」〜

 皆さん、「国営公園」ってご存知でしょうか? 国(国土交通省)が設置・維持管理をしている都市公園で、例えば「岡山県」といった一つの県ではなく、都府県の区域を越えたより広い見地から作られた公園、また国家的な記念事業や日本固有の文化的資産の保存・活用のために作られた公園のことです。
(国営公園に関する詳しい情報は以下の国土交通省のホームページでご覧になれます。
別ウィンドウで開きますhttp://www.mlit.go.jp/crd/city/park/gyomu/p_kokuei/nihon/index.html )

 2007年現在、全国に16箇所の国営公園が開園していますが、今回ご紹介する「備北丘陵公園」は、中国地方唯一の国営公園です! 最初の整備区域が開園されたのは1995年で、その後も計画に基づいて整備を進めながら、現在も段階的に開園区域を広げています。
写真:公園の全体図が描かれた案内板
 この公園は、中国地方の全域から利用してもらえるようにと、中国山地のほぼ中央に作られました。緑溢れる園内には、備北地方のふるさとの景観や暮らしを再現したエリア「ひばの里」や、四季折々に美しい情景が広がる「花の広場」があり、特に花が見頃を迎える春や秋には多くの人がここを訪れます。

 ただ、ここは森や湖などの自然環境を生かした「丘陵公園」ですから、園内の地形は起伏に富んでいます。そのため、全ての坂道を傾斜の緩やかなバリアフリー対応にするには無理があります。しかしなるべくたくさんの人が快適に楽しめるよう、園路の設計や園内の移動手段などに、開園以後もいろいろな改善が図られてきました。

 広い敷地をめぐる園路は、「歩行者用」「自転車用」「自動車用」の3種類のルートに分けられています。(公園事務所の方に伺ったところ、園内を車で通行して複数の駐車場間を移動できる国営公園は珍しいとのことでした。)またこれらのルートが交わる場所は、立体交差に変更したことで安全性が増し、それぞれの人がより安心して利用できる道になったそうです。
写真:三輪の電動スクーター    写真:家族連れのお客さんを乗せて走るシルバーカー
 公園入口のビジターセンターでは、車いすやベビーカーだけでなく「電動スクーター」(左の写真)の貸出しも行っています。さらに一部のルートでは「シルバーカー」(右の写真)という8人乗りの専用車が運行しています(冬季12月〜2月は運休)。いずれも無料です!
 これらはお年寄りや身体の不自由な方が優先となっていますが、他に小さな子どものいる家族連れなどにも重宝されているとのことでした。
写真:緑に囲まれた園路とベンチ。子どもを抱きかかえた女性が歩いている 写真:ベンチを取り囲むように植えられた赤と白のサルビアの花
 こちらは「歩行者用」の園路です。ゆったりとした幅があり、きれいに舗装された坂道が長く続きますが、歩道の脇には数十メートルごとにベンチが置かれていました。気軽に休むことができるこうしたベンチの周りは、緑の笹や、きれいに植えられた花々に囲まれていますね。

 長い坂道では、歩く人はもちろん、車いすを押す人、ベビーカーを押す家族連れも休憩したくなります。(自分自身は車いすに乗り、誰かに押してもらっている人からも、「休憩したい」という声が聞かれました。理由は「押してくれている人がきっと大変だろうから」。)
 全てのベンチではなく、数箇所置きでも構いません。もしベンチの横に水平なゆとりのスペースが設けてあると、車いすやベビーカーも隣に並んでゆっくり休めるでしょう。
写真:芽を出して間もないコスモスの畑と木造の展望台 写真:展望台から見渡した広い畑と緑の山々
 こちらはこの公園で人気の高い場所の一つ、「花の広場」です。 ここには「はなの展望台」という木造の建物があり(左の写真)、ここに上がると3階のデッキから広々とした花畑を眺めることができます(右の写真)。
 
 私たちが訪れた時、花畑はちょうど次のシーズンに向けての準備中だったのですが、それでも畑に作られた畝の線の面白さを発見したり、遠くの山々まで見渡す開放感を味わったり、下から眺めるのとはまた違った楽しみがありました。
 この花畑一面に菜の花やチューリップ、コスモスが咲き乱れる季節は、きっと感動的な美しさでしょう! それぞれの季節に多くのリピーターが訪れるのも納得です。
写真:3階建ての花の展望台 写真:展望台の階段下にいる車いすの女性と介助の女性
 「はなの展望台」には、階段で上がるようになっています。
 せっかくのこの眺め、足腰に自信のない人や車いすの人も気軽に楽しめると嬉しいですよね。もちろんエレベーターが設置できれば最高ですが、建物の構造上難しいかもしれません。そこで例えば、建物の柱に沿って長ーい潜望鏡を取り付けるというのはどうでしょう?! その潜望鏡を覗き込むと、地上にいながらにして最上階からの景色を見られてちょっとワクワク・・・。あら?発想が幼稚でしたか。
 より良いアイデアを思いつかれた方は、ぜひお教え下さい。


 それでは、いよいよ子どもの遊び場へ行ってみましょう。
写真:青空をバックに、芝生の丘の斜面に建つ大型複合遊具
 「備北丘陵公園」にはいくつかの異なるタイプの遊び場がありますが、公園のほぼ中央に位置する広大な芝生の丘には、車いすに乗る子どもも遊べるように工夫された大型複合遊具が設置されています。
写真:複合遊具の頂上から蛇行してのびるローラー滑り台 写真:ターザンロープにぶら下がって遊ぶ女の子
 この複合遊具には、長い滑り台、急な滑り台、幅の広い滑り台など、いくつもの滑り台があり、他にもターザンロープやネットなど、じつに多様な遊具が備えられています。子どもにとっては、隅々まで探検したくなる大きな遊びの森のような場所です!
写真:長くのびるつづらおりのスロープ 写真:どんぐりの形の遊具が置かれたメインデッキ
 車いす利用者も、九十九折(つづらおり)の長いスロープ(左の写真)を上がるか、芝生広場脇の園路をさらに上った所から遊具を回りこむようにアプローチすれば、広いメインデッキ(右の写真)にたどりつけます。
写真:幅広のローラー滑り台のスタート地点。手前に2本の赤いポール 写真:ローラー滑り台の到着地点。所々に芝が残る斜面は土が洗われ凹凸が生じている
 そしてそこから幅広で長いローラー滑り台を楽しむことができます(左の写真)。
 車いすのままアクセスできる滑り台はこの1本だけですが、なだらかな長い斜面を時間をかけて滑るので、比較的安全ですし満足感も味わえそうです。

 ただ、滑り台の下は、芝、土、部分的に敷かれたゴム製のマットなどで、凸凹や段差が多い地面となっています(右の写真)。そのため子どもが滑り台を滑った後、誰かに運んでもらった車いすにここで乗ったとしても、そこから移動しにくい点が課題です。
 芝生や土にもそれぞれの良さがありますが、車いすで通ることが想定されるルートや、車いすの子どもも利用できそうな遊具へのルートは、アクセスしやすい地表面であることが望まれます。


 一方で、この大型複合遊具には、注目すべき特徴がありました。 車いす利用者をメインデッキに導く九十九折の長いスロープ。ともすれば単調な、あるいはひたすら車いすをこぐ、試練の通路になってしまいがちです。 ここに変化や楽しさを持たせるために、独自の工夫が試みられていました。
写真:黒い床のスロープ。両脇にポールが並ぶ 写真:床に緑のシートが敷かれたスロープ
 左の写真では、スロープの両脇にゴム製のポールがジグザグに並んでいます。車いすをこぐ子どもにとってはちょっとしたスラローム気分を味わえるかもしれません。床には黒いゴム素材のシートが敷かれているので、タイヤが密着し、こぎやすいスロープです。 右の写真の、緑のシートが敷かれたスロープをこぐと、密に織られた毛足の短ーいカーペットの上を行くような感覚とでも言いましょうか・・・。  
写真:木の床のスロープ。一部にトンネル状の屋根 
 一方こちらは、普通に板が敷き詰められたスロープですね。ただ、スロープの一部分が岩肌を模したトンネルのような屋根で覆われています。この短いトンネルにどんな効果があるのか、はっきり気付いたのはこのスロープを車いすで下りていた時でした。

 カタカタカタ・・・と小さな音と振動を感じながら滑るように下りていると、トンネルの中を通過した一瞬、その「カタカタ」が不意に大きな音で反響したのです! びっくりするやら、おかしいやら。思わずもう一度通りたくなりました。
 その後、緑の床も、黒い床も、それぞれ違った音と振動を感じながら通過。ある程度のスピード感とともに地面の微妙な違いも実感できる、車いすならではの楽しみ方かもしれません。

 こうしたスロープへのユニークな工夫を発展させれば、車いすに乗っていない子どもも、あるいはほかの障害を持つ子どもも、ともに楽しめる仕掛けにできるのでは?!
 例えば、床板を踏むと音がし、続けて踏んでいくと何かのメロディーになっているとか?
 あるいは人が通過すると、手すりに並んで取り付けられたたくさんの風車が順に回り始めるとか?
 ただの通路を脱却して、あらゆる人が通りたくなるスロープへ!
 他にもいろいろ楽しいアイデアが出てきそうな気がしませんか?


 さて。
 ここまでご紹介してきたように、中国地方唯一の国営公園は「丘陵公園」です。
 また、この複合遊具がある芝生広場は、どの駐車場からも数百メートルの距離、坂道を上ったり下ったりしてたどりつける場所です。

 それでも子どもからお年寄りまで、様々な人がより快適に利用できるよう、現在も改善が重ねられていること、
 そして今から10年以上も前、最初の開園区域の遊び場に、「障害を持つ子どもも一緒に遊べる」というコンセプトを持った遊具が導入されたことに、感動を覚えます。

 この度、公園をていねいに案内して下さり、私たちの声にも熱心に耳を傾けて下さった公園事務所の方から、どのような環境でも諦めることなく挑戦し、進化を続けていくことの大切さを教えていただいた思いです。
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