
「UD公園のヒント・海外編No.04」
公園アルバムinカリフォルニア(前編)
〜アメリカ・シェーンズ インスピレーションより〜
公園アルバムinカリフォルニア(前編)
〜アメリカ・シェーンズ インスピレーションより〜
“Shane’s Inspiration™”(シェーンズ インスピレーション)は、アメリカのカリフォルニア州を拠点に誰もが利用できる公園をつくる支援活動をしているNPOです。
このNPOが立ち上がったきっかけでもある最初のプレイグラウンド「シェーンズ インスピレーション」が、ロサンジェルス市を代表する公園Griffith Park(グリフィスパーク)の一角に誕生したのは2000年の秋でした。
この夏、ロサンジェルスを訪れ、シェーンズ インスピレーションが手掛けた公園4箇所を見学してきました。そこには新しい発見と、たくさんの子どもたちの笑顔がありました。
「『工夫次第で、多様な子どもたちが一緒に遊べる公園は実現できるんだ』ということを、日本のいろいろな人たちに知ってほしい」という私たちに対し、NPOスタッフのマーニーさんは「ぜひこの公園をみんなに紹介して! 私たちの願いは、こうした誰もが利用できる公園が世界中に広がっていくことだから」と笑顔で答えてくれました。
今回の「公園アルバムin カリフォルニア(前編)」では、このNPOにとって第1号の公園「シェーンズ インスピレーション」をご紹介します!

マーニーさん:「ここの土地はロサンジェルス市に掛け合って提供してもらったの。今ではグリフィスパークの中にこの遊び場があることを、市は誇りにしているのよ。自治体としてもすごくいいPRになるから」
またどちらのパネルにも細長い金属のプレートが付いていますが、そこにはそれぞれの数字や文字に対応する点字が表記されています。誰もが幼い時から、遊びの中で点字に親しむことができます。


一人で遊ぶ子どもは、思わぬ方向に吐き出されるボールを追いかけては、また投げ入れることを繰り返しています。いい運動になりますが、長時間遊ぶにはあまり向いていません。そこで誰かを誘いたくなります。3人いれば、みんなでボールの出口を分担して楽しむことができますよね。
車いすでも快適に走り回れる地面、 上手・下手にかかわらずほぼ平等に回ってくるチャンス、 たとえ初めて出会った相手とも、すぐに一緒に遊べる遊具・・・ ここにもユニバーサルデザイン(UD)の理念が感じられませんか?

さて突然ですがここで問題です!
ステージの手前(客席)に並んでいるベンチをご覧下さい。舞台の横幅と比べるとずいぶん短いベンチばかりが、1列目は右寄り、2列目は左寄り、と互い違いに置かれています。なぜでしょう?(答えはレポートの最後に)

マーニーさん:「じつはこの公園ができた当初、障害児の利用は予想より少なかったの。それは障害をもつ子どもを連れ出すことに対して、保護者がまだいろいろな抵抗感を持っているケースがあったから。そこでまず、あらゆる人に気軽に公園へ来てもらうためにこのイベントを開くことにしたの。今では平均百人以上が訪れるのよ。この公園は、子どもにとっても親にとっても、外の世界に一歩踏み出して心から楽しんだり、新しい友だちを作ったりするきっかけの場になっているの」

マーニーさん:「誰もが利用できるこの公園は、障害をもつ子どもやその親たちにすごく好評で、中には車で2時間かけてやってくる家族もいるの! でも適当な交通手段が無いために来たくても来られない人たちもいる。だからイベントの日は、事前に予約をすると無料でバス送迎をするサービスも行っているのよ」

車いすの子どもにとってアクセシブルであるだけでなく、他の子どもにとっても様々な感覚刺激を得られる優れた遊具がたくさんある。こうした公園がもっと増えてほしいわ」
イベントに参加している子どもは、年齢も、人種も、障害も、じつに様々です。
それぞれの子どもが思い思いに遊び、小さな触れ合いがあちこちで自然発生します。

歩行器で一歩ずつ歩く女の子

「あっち、行ってみようよ!」
友だちの車いすを押してスロープを行く男の子

プレイパネルを回して遊ぶ
バギーに乗った女の子

「これがほしいの?」
ダウン症の男の子に遊具を渡す男の子


ここで先ほどの問題を思い出してみましょう。
問い「客席に、短いベンチが互い違いに置かれているのはなぜ?」
最前列をご覧下さい。右寄りのベンチに腰掛けている人たちの隣のスペースには、バギーの女の子や、車いすのコール君や、コール君の介助犬が並んで座っていますね。もしも舞台の幅と同じ長さのベンチが置かれていたら、彼らは列の前や横に押し出されてしまうわけですが、短いベンチによる空きスペースのおかげでしっくりと納まっています。
また、女の子やコール君のすぐ後ろ、左寄りに置かれた2列目のベンチには、それぞれのお母さんたちが座っています。後ろから子どもに声をかけたり、飲み物を渡したりするのに、好都合なポジションのようです。 また「いきなり前の方はちょっと…」とか「今日は後ろに座りたい!」という車いすの子どもだっているでしょう。このベンチの配置は、そんなニーズにも対応できます。
決して全ての列で、ベンチの隣に車いすやベビーカーの子どもが並んでいるわけではありませんが、それはそれで適度なゆとりスペースとなっています。
答え「個人的にも、全体的にも何だかいい感じで座れるから!」
うーん。あまり明快な答えではないですね・・・。
でも、もし全部が長いベンチだったら?
もし短いベンチがすべて右側だけに置かれていたら?
もし前の2列分が車いす専用の空きスペースで、後ろだけにベンチが並んでいたら?
こんな「いい感じ」にはならないはずです。
肌の色も、話す言葉も、年代も、障害種別も異なる様々な人たちが集い、 舞台の上、客席、さらにステージの周りの芝生や木陰からも笑顔で拍手を送り合っている。 NPO「シェーンズ インスピレーション」の目指す世界のミニチュア版が、このステージの周りにできあがっています。
そして互い違いに置かれた短いベンチが、この世界を演出するための、ささやかだけど大切な役割を果たしていることは確かです。




