コラム&こぼれ話

コラムNo.11 ADAAGにみる「遊ぶ権利の保障」

みーんなの公園プロジェクト
矢藤洋子

 「ADAAG」とは、「ADA(障害を持つアメリカ人法)」に基づいてつくられたアクセシビリティガイドラインのことです(コラムNo.8)。「遊び場のADAAG」には、アクセシブルな公園や遊具を設計するための詳細な技術規定が載っています。しかしこのガイドラインは、単に公園をバリアフリーにするための手段を示したものではありません。カギとなっているのは「遊ぶ権利の保障」です。

 例えば、Ground Level遊具(ブランコやスプリング遊具など、地面から直接乗り降りして利用する遊具)の項目には、次のような規定があります。設置する遊具を、「揺れる」「回転する」「弾む」など遊びのタイプによって分類し、各タイプにそれぞれ一つ以上はアクセシブルなルート上に設置すること――。
 例えば、「揺れる」遊具であるブランコを4連(4座)、砂の地面に設置する際は、そのうち少なくとも1つは、車いすユーザーも利用できるようアクセシブルな地表面とスペース等を確保する必要があります。さらに別の遊びのタイプの遊具を設置すれば、同様にしてアクセシブルな遊具のタイプも増えていく、というわけです。

 では、地面より高い場所にある遊具の場合はどうでしょう。
 複合遊具上などにある遊びの要素を指すElevated遊具の規定によると、まずそれらの遊具が遊び場にいくつあるかを、「すべり台3本、はしご5か所、デッキ上のプレイパネル6枚・・・」という具合にすべて数え上げます。その総数が20未満の場合は、そのうち50%以上の遊具に「スロープまたは移乗システム(※)」などを使ってアクセスできること、また総数が20以上の場合は、その50%以上にアクセスできるだけでなく、25%以上の遊具には「必ずスロープ」で(つまり車いすや歩行器のまま)アクセスできること、となっています。
 さらに、Elevated遊具の総数が多い遊び場には、地面に設置するアクセシブルなGround Level遊具のタイプや数も相応に増やすことが求められ、各必要数を示した対応表もあります。

 なかなか複雑な規定ですが、もしこれらの決まりがなかったらどうなるでしょう。
 「広い遊び場にもかかわらず、自分は一つの遊びしか経験できない」、あるいは「友だちは大きな複合遊具の上で楽しそうに遊んでいるのに、自分だけ所在なく地上に置き去り」など、障害のある子どもにとって公平性を欠いた、申し訳程度の「アクセシブル」公園が増えるかもしれません。

 遊び場のADAAGは、障害を理由に特定の子どもが、公共の施設である公園で遊ぶ機会を著しく制限されている状態を権利の侵害とみなし、こうした事態が起こるのを避けるために導き出されたアクセシビリティの必要最低条件です。
 個別の規定の妥当性など各論については意見が分かれるとしても、多様な子どもが同じ場所でなるべく公平に遊べるよう、子どもの「遊ぶ権利の保障」に焦点を当てたその考え方には、学ぶ所があるのではないでしょうか。