Q: つくり隊さんは、完成した遊び場で地域の方と協力してインクルーシブなイベントも開催しておられますね。
遊び場を「つくる」だけでなくみんなで「活用する=育てる」活動として注目されていますが、イベントの内容について少し教えてもらえますか?
私たちは、インクルーシブ公園を「つくって終わり」にせず、みんなでつくった公園を、みんなで楽しみながら育てていくことを大切に、完成後も地域の皆さんと一緒にイベントを重ねてきました。活動の大前提にある目標は「本物のインクルーシブ公園」をつくることです。インクルーシブ公園は、出会いや関わりが生まれることで育ち、ゆっくりと時間をかけて地域に根づいていく——私たちはそう考えています。
そのために私たちは、公園づくりを“整備”だけで終わらせず、対話と体験を通してインクルーシブが根づいていくプロセスとして育ててきました。身近な声を持ち寄る対話の場、暮らしの視点からアイデアを深める場、誰でもふらっと参加できる音楽や体験の場——それらを重ねながら、子どもから大人まで自然に集い、同じ時間を共有できる公園へと少しずつ輪を広げてきました。
これまで(3年目まで)は、つくり隊(大人)が企画したイベントに子どもたちが参加する形が中心でした。子どもが「公園でやってみたい!」を入口に、公園に親しめる企画を重ねながら、行政や福祉関係の皆さんにも協力いただき、遊びの中で自然に多様性に触れられる場をつくってきました。


そして4年目(今年度)、私たちが一番挑戦したのは、子どもたち自身がインクルーシブを学び、「自分も楽しい、みんなも楽しい」をテーマに、公園イベントを企画・運営する“子どもの参画企画”です。月1回・全5回のワークショップを通して、子どもたちはアイデアを出し合い、役割を決め、準備を進め、当日を “つくる側” に立ちました。最初は緊張したり恥ずかしそうにしていた子も、回を重ねるごとに少しずつ自分の言葉で想いを伝え、仲間の意見に耳を傾け、のびのびと自然体で参加できるようになっていきました。





最終回のふり返りでは、「大変だったけど、だんだんできるようになって楽しかった」「説明をほめられて自信になった」「やりきった気持ちになれた」など、“ただの感想”ではない本物の言葉がたくさん出てきました。子どもたちが自分の成長を自分の言葉で認められたことは、とても大きな経験だったと思います。
また、子どもたちが主役になったことで、まちの側にも変化が生まれました。市長をはじめ、市内の複数部署から子ども一人ひとりへ温かなメッセージが届き、子どもたちは「自分の頑張りを、まちがちゃんと見てくれている」ことを実感する場面がありました。大人たちが子どもに“参加してもらう”のではなく、子どもたちの挑戦にまちが応えていく——そんな関係が確かに生まれたと思います。

「公園を育てること」は、「心を育てること」、そして「まちを育てること」につながっています。公園を起点に、普段は交わる機会の少ない人たちが自然につながり、心がふっとあたたかくなる。その瞬間を、子どもたち自身がつくり出してくれたことが、何よりの宝物です。
Q:「山のなかよし広場」がオープンして以来、たくさんの子どもたちが遊び場を楽しむ様子をご覧になってきたと思います。
その中であらためて気づいたことや、印象的なエピソードがあればお聞かせいただけますか?

もともと麻痺があって、息子のゆうらは公園のブランコくらいしか遊べませんでした。この物語は、そんなゆうらが、大好きだったブランコに乗れなくなったところから始まりました。
「障がいのある子どものお母さんが声を上げて、
自分のまちにインクルーシブ公園をつくった。
インクルーシブなブランコも設置されて、楽しそうに遊ぶ子どもの姿…。」
めでたしめでたし! あぁ、なんて美談!!
——そんな展開を期待されるかもしれません。
でも、残念! 現実ってそんなにきれいにはいかないもんなんです(笑)
(※あくまで我が家の場合、という話です)

息子は難治性てんかんの治療のために手術を受け、右半身に重い麻痺があります。体幹が弱く、姿勢を保つのが難しい。そういう子どもにとっては、どんな魅力的な遊具も「遊びたい」気持ちよりも「不安定で怖い」気持ちが勝ることもしばしば。
そう、息子からしたらインクルーシブなブランコだろうが何だろうが、
「いや、俺はそんなもんには乗らん!!」——が現実(笑)
大仏山公園のオープニングで取材に来てくださった方から「ブランコに乗ってるところを撮りたい!」というお声もあったのですが、もちろん乗るはずもなく。結局、公園が完成しても、ゆうらがブランコに乗ることはありませんでした。
ところが、ある日。
年下の男の子(園児)が「ゆうらくん、いっしょにのろー!」と声をかけてくれました。兄さん風を吹かせたいお年頃のゆうらは、ちょっと照れながら「うん、いいよ」と返して、三人でブランコに乗ったんです。
……そう。ついに、乗ったんです(笑)

このとき私は、「インクルーシブ公園ってこういうこと」だよね、と。
いくら、ゆうらがブランコで遊びたいと思っても、乗れるブランコがなきゃ遊べない(ハード)。
いくら、乗れるブランコがあっても、本人が遊びたいと思わなきゃ意味がない(ソフト)。
あの日、あの場所には、その両方がちゃんとあった。
だから、自然とゆうらはブランコに乗った。
“遊べる形”があること。
“遊びたい”が芽生える関係があること。
このどっちもが育っている環境は、実はとてもレアです。
あの日、子どもたちが楽しそうにブランコで遊ぶ姿を見ながら、「自分たちがやってきたことが、本当の意味で実現したんだ」と、胸がいっぱいになりました。

Q: インクルーシブ公園ならではの素敵なエピソードですね!
最後に、つくり隊さんの今後の活動についてお聞かせください。
あわせて「自分たちのまちにもインクルーシブな遊び場を!」と願っている皆さんへのメッセージもいただけますか?
つくり隊としては、今後も「みんなでつくった公園を、みんなで育てる、みんなで楽しむ」ことを軸に、公園を起点にした活動を続けていきたいと思っています。具体的には、子どもたちが主役になって学び、関わり、地域とつながっていく機会を、学校や地域の皆さんと連携しながら重ねていくことです。
そして、公園づくりを通して生まれた横断的なつながり(行政・学校・福祉・企業・市民)をこれからも大切にしながら、立場の違う人たちが気軽に出会い、対話し、一緒に育てていける“場”をつくっていきたいです。
さらにその先に、伊勢で生まれたあたたかな実践やつながりが、必要としている人たちのもとへ少しずつ届いていくように——インクルーシブの輪を広げていけたらと思っています。

また、「自分たちのまちにもインクルーシブな遊び場を」と願っている皆さんへお伝えしたいのは、インクルーシブ公園は“遊具”だけで完成するものではない、ということです。もちろんハードは大切です。でもそれ以上に、対話や体験を重ねながら「知ること」から始めていくことで、公園は“関係が育つ場所”になっていきます。最初から完璧な形を目指さなくていいんです。小さな一歩でも、声を上げて、誰かと話して、仲間を増やしていく——そのプロセスそのものが、まちを動かす力になっていきます。
そして何より、公園は子どもたちにとって、インクルーシブを学ぶ場であると同時に、「自分も楽しい、みんなも楽しい」を実体験できる場所です。もし迷ったときは、ぜひ子どもたちの声を真ん中に置いてみてください。子どもたちのひらめきや優しさは、まちの未来を動かす大きな力になると、私たちは実感しています。
たくさんの人と一緒に創造するワクワクは、インクルーシブのいちばんの原動力! 公園を育てることを、めいっぱい楽しんで欲しいです。

――貴重なお話をありがとうございました。
(2025年2月。Q&A形式での寄稿にご協力いただきました)