コラムNo.17 国連・子どもの権利委員会からの宿題

 国連子どもの権利条約(1989年採択、日本は1994年に批准)の第31条には、「締約国は、休息及び余暇についての児童の権利並びに児童がその年齢に適した遊び及びレクリエーションの活動を行い並びに文化的な生活及び芸術に自由に参加する権利を認める」とあります。ちなみに国連障害者の権利条約(2006年採択、日本は先の国会(2013年12月)で批准を決定)にも、第30条の中に「障害のある児童が遊び、レクリエーション、余暇及びスポーツ活動への参加について均等な機会を享受することを確保すること」と記されています。いずれの条約も、「遊び」を子どもの権利と認めています。それは「遊び」 が、子どもの身体的、社会的、認知的、情緒的発達を含むトータルな成長に欠かせない重要な要素だからです。

 今年(2013年)、子どもの権利条約第31条に対する「一般的意見」(General Comment) が、国連・子どもの権利委員会によって公布されました。この委員会は、条約の締約国が子どもの諸権利を実現できているかを検証し、達成を促す審査機関です。第31条への各国の認識と取り組みが不十分であることから、委員会はあらためて見解を示し改善を迫ることにしたのです。「一般的意見」には、第31条の意義や現状における課題、今後実現に向けて必要な措置等が具体的に明示されました。

 そこで特に留意が必要とされた子どもたちの中に、障害を持つ子どもが含まれています。公園や遊び場、遊具などの各種施設や公共空間におけるアクセシビリティの欠如をはじめ、さまざまな社会的場面からの排除、自宅での孤立、人々が障害児に対して抱く否定的な固定概念などの複合的な障壁が、彼らの権利を阻害していると指摘しました。そして、「家族や養育者、専門家は、障害を持つ子どもの権利であるとともに最適な発達の手段でもあるインクルーシブな遊びの価値を認識する必要がある」と述べています。さらに締約国に対し、障害を持つ子どもたちがアクセシブルでインクルーシブな環境や施設を利用できるようにし、対等かつ主体的な参加者として遊びに参加する機会を促進することを求めています。

 加えて、各国が義務として取るべき措置の中には、「ユニバーサルデザイン」も明記されました。

 私たちは宿題を出されました。それも後回しにできない宿題です。なぜならこれは、いつかまとめて解決すればそれまでの遅れを帳消しにできる問題ではないからです。
 私たちが改善を先送りする間にも、障害を持つ子どもは発達に不可欠な遊ぶ機会を逸したまま、同世代の子どもや地域住民との交流が制限された中で、一人また一人と大人になっていきます。同時に、障害を持つ人々と接することなく成長する多くの子どもたちが、人の多様性に不寛容な社会や文化を無自覚に踏襲していけば、委員会が指摘した「複合的な障壁」を取り除くことはますます困難になります。

 私たちは「一般的意見」が再提起したこの課題に、今こそ取り組むべきではないでしょうか。
 すべての子どもが自分の力を生き生きと発揮しながら、さまざまな友達とともに遊び学べるインクルーシブな公園づくりが、改善の鍵を握っていることは明らかです。

ARC 平野裕二の子どもの権利・国際情報サイト 一般的意見17号(日本語)