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こどもが元気になる国づくり・まちづくりの記念講演会

 10月20日、こども環境学会の設立10周年を記念する講演会&シンポジウムが東京で開かれ、講演者としてアメリカからRobin Moore氏等が招かれました。同氏は子どもの遊び環境に関する著名な専門家で、“PLAY FOR ALL Guidelines”という本の編著者でもあります。

 この本は、障害のある子どもを含むすべての子どものための遊び場づくりのガイドで、初版が出たのは四半世紀も前の1987年のこと! その3年後に同国で「障害を持つアメリカ人法」が制定されたことなどを受け、1992年に第2版が発行されました(和訳本『子どものための遊び環境』鹿島出版会)。その内容は大変充実しており、インクルーシブな遊び場づくりの指針として、今も私たちに貴重な示唆を与えてくれます。

 その後アメリカでは、公園遊具メーカーの開発努力やNPOの活躍、法律のさらなる後押しもあり、アクセシブルな公園づくりが加速します。ただし中には、平坦なゴムチップ舗装の地面に最小限のアクセシブル遊具を設置しただけ…など、人工的で単調な遊び場も見受けられるようになりました。そこで近年、より変化に富むランドスケープや自然の要素をうまく取り入れることの価値が徐々に注目され始めています。

 今回の講演では、現在、Robin Moore氏等がノースカロライナ州立大学のNatural Learning Initiative(NLI)で取り組む、保育園や公園の遊び場を自然豊かで多彩な活動が可能な環境にするための研究と実践が紹介されました。(この取り組みはUDに主眼を置いたものではありませんが、もちろん考慮はされています。ちなみにMoore氏は、UDの提唱者であるRon Mace氏が同大学で創設したユニバーサルデザインセンターの設立メンバーでもあります。)

 NLIでは、優れた遊び場をデザインするコツやアイデアを、ウェブサイトなどを通じて積極的に公開しています。Moore氏いわく、「大切なのは、情報を普及させること」。彼らのような専門家が直接手掛けられる遊び場の数には限りがありますが、有益な情報が広くシェアされれば、より多くの子どもに貢献することが可能です。私たちもこうした研究から学びながら、実践に役立つ情報を皆さんに提供したいと考えています。

 みーんなの公園プロジェクトでは、インクルーシブな遊び場づくりのためのガイドの作成に着手しています。