
元クイーンズランド オールアビリティズ プレイグラウンド プロジェクトマネージャー
◆プロフィール
私が遊び場を含む社会的、物理的環境に関心をもったのは、社会科学を学んだ経験からです。とりわけ、人と環境の関係性に着目し、質的調査や、障害をもつ人々との仕事をしてきました。特に情熱を傾けているのは、都市環境で暮らす障害をもつ子どもや若者、そしてその家族の生活体験を現象論的な考え方で明らかにし、理解する研究です。都市や社会政策、計画や設計について研鑚を積み、障害の有無を問わずすべての人がよりよい生活体験を得られる都市環境づくりに役立てたいと思っています。総体的に言うと、私の仕事と研究は、障害をもつ子どもたちやその家族のための遊び場の水準をつくることで、彼らに自分たちの権利や願望を認識してもらうことです。
現在私は、クイーンズランド技術大学の博士課程の最終学年に在籍しています。博士論文のテーマは、異なる身体障害をもつ子どもたちの、都市環境における生活体験を明らかにすることで、自宅や学校、地域社会など様々な場所で、10人の子どもの実地調査を行っています。また2011年からは、クイーンズランド脳性まひ連盟の非常勤研究員の職に就き、環境要因が脳性まひの若者や大人の日常生活における参加にどう影響するかをマッピングするための調査をともに進めています。今年(2011年)、私はオールアビリティズプレイグラウンドプロジェクトに直接携わっているわけではありませんが、引き続き自治体や設計者たちに、すべての子どものための遊び場づくりに関する情報や知識、技術の提供をしています。
クイーンズランド オールアビリティズ プレイグラウンド プロジェクト(QAAPP)について
2007年、クイーンズランド州は州内に16のオールアビリティズプレイグラウンドをつくるため、5百万豪ドル(当時約4.75憶円)の予算をつけた。その革新的な遊び場は、障害をもつ子どもも含めすべての子どもたちに平等なアクセスと遊びへの参加を提供するもので、そこでの遊びを通して彼らは、兄弟姉妹や友だちとともに学び、育ち、発達することができる。
QAAPPのサイトをご覧ください。
◆インタビュー
Q: オールアビリティズプレイグラウンドをいくつか訪れましたが、とてもユニークでよく考えられていますね。なにより地域の子どもや家族に大変な人気でした。 Lisaさんは、プロジェクトマネージャーとしてQAAPPをはじめから率いてこられたわけですが、この事業が実施された背景を教えていただけますか?
A: オールアビリティズプレイグラウンドをつくるアイデアが生まれたのは2004年のことでした。家族で楽しんだり休んだりできる場所を建設するための資金が、少額ながらもらえたのです。私はそれまでの障害をもつ家族との仕事の中で、従来型の公園には、障害児の遊びの機会を妨げるバリアや課題があることに気付いていました。そこで、多くの介助を必要とする子どものニーズに応え、その家族にも考慮された遊び環境をつくることこそ、有効な資金の使い道だと思ったのです。2004年の中頃に、私はアイデアを固めるため、家族を対象に実現可能性を探る調査を行い、後に地元の自治体(元カラウンドラ市)との設計や協働へとつながりました。クイーンズランドのサンシャインコーストにあるランズボローという町に、部局で初めてのオールアビリティズプレイグラウンド「パイオニアパーク」をつくる作業が始まったのです。
このプロジェクトの最優先事項となったのは、従来の公園にあるバリアを取り除き、子どもや家族のニーズに応えることでした。2004年の後半には、遊び場を計画、設計するためのワーキンググループが結成され、そこには私の他に、体に障害をもつ子どもやその家族、NGOモントローズアクセスの作業療法士、景観設計者や建設管理者を含む自治体職員、外部の設計者、製造業者が含まれていました。この参加型のプロセスが、遊び場づくりを成功させる鍵となりました。サンシャインコーストの地域の方からも多大な支援を得て、2006年2月に素晴らしい遊び場が完成しました。この遊び場への住民のサポートは、2011年の今も続いています。
この成功から、オールアビリティズプレイグラウンドのコンセプトをクイーンズランド州全体に広げることが選挙公約にも上り、2006年の終わりには5百万豪ドルもの予算がつきました。2007年、私は州を上げての事業、クイーンズランドオールアビリティズプレイグラウンド(QAAPP)のコンセプト開発に取りかかり、2010年の終わりまでこの事業を率いてきました。残念ながら、資金に限りがあってプロジェクトチームもその時解散したのですが、12の公園がオープンし、残る4つも完成に向け進行中です。(
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Q: すべての子どものための遊び場をデザインするにあたって、重要な要素は何ですか?
A: いろいろな意見があるかと思いますが、私の経験では、「すべての子どもが遊べる」、「家族をしっかりと支える」、「地方行政と産業界に学びと発展をもたらす」の3つのキーコンセプトをまとめた参加型のデザイン体制が、オールアビリティズプレイグラウンド(AAP)をつくる上で一番の要になったと思っています。AAPでは確実に、障害のある子どもや家族のニーズが理解され、デザインでそれに応える必要があります。
「今日では、そこを使うことになる家族たちに実際に尋ねることなしに、遊び場をデザインすることなんてできないと思います。見当違いのものになってしまいますから。日常的に利用する人たちに聞かずして、何のための公園づくりでしょう? 聞くことは極めて大切です」 (アンジーさん:母親、サーインゴワ リバーフロントのAAPづくりに参加したアンブレラネットワークグループの代表。
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この方法論をプロジェクトに終始適用することで、継続的な対話がもたらされ、具体的な検討場面では障害児やその家族、地域住民のニーズが最優先に考慮されます。この参加型アプローチは決して新しいコンセプトではなく、社会科学とデザインをつなげたヘンリー・サノフのような建築家たちの間で1960年代に起こった社会的建築への動きに端を発しています。
先ほど概要として、「すべての子どもが遊べる」、「家族をしっかりと支える」、「地方行政と産業界に学びと発展をもたらす」の3つのコンセプトがあると述べましたが、それらは次のようにまとめられます。
1.すべての子どもが遊べる:
「遊べる」とは、それぞれの子どもが、価値と目的をもった遊びを体験できるようにすることだと考えています。これまでの観察で私もよく目にしましたし、体に障害のある子どもたちからも語られることですが、彼らは他の子どもが遊ぶのをただ見ている立場か、「アクセシブル」とうたう申し訳程度のプレイパネルに追いやられてしまって、公園で度々つまらない思いをしています。
「遊べる」ようにするためには、遊び環境を構成するすべてのスペースや要素に行けるよう、駐車場からの連続した通り道がなければいけません。こうすることで、子どもがただ他の子と同じスペースにいられるようになるだけでなく、移動に様々な助けを必要とする子どもたち(車いすやクラッチ、歩行器の利用者や、足取りの不安定な子どもも含む)が、自由にあちこち動き回り、遊び場の中で行われる鬼ごっこなどの集団遊びに参加できるようになります。
次に、障害や年齢など多様な子どもたちに、いろいろなタイプの遊び(身体的、想像的、認知的、社会的)を体験できる選択肢と機会が提供されなければなりません。自然物であれ人工物であれ、子どもたちには年齢や能力に見合った、多様性、遊びの価値、そして挑戦が必要です。
2.家族をしっかりと支える:
「家族を支える」とは、家族全員が楽しんだり、リラックスしたり、日々の生活から離れてほっと一休みできる、安全で自由な環境を提供することです。特定の施設では、家族のニーズ、中でも子どもがたくさんいたり、重い障害をもつ人がいる家族のニーズはぜひとも満たされるべきです。もしこうしたニーズに応えられていないと、多くの家族は大変で困難なその場所に行くことをやめてしまいます。
家族は、自分たちの利用を容易にするものとして次のような設備をあげています。アクセシブルな駐車場、周りを囲うフェンス、充実した座る場所、ピクニックやバーベキュー施設、日除け、アクセシブルなトイレ(大きな子どもや、大人が使う必要もあるので、少なくとも一か所には頑丈な着替え・おむつ替えシートがあるとよい)。また、子どもも大人もいっしょに使える多目的トイレもあげられており、これらは小さな子どもが何人もいる親たちにとっても有用です。
3.地方行政や産業界に学びと発展をもたらす:
これは、子どもや障害、そして遊び場に関する考え方やデザイン実践をシフトするべく、新しい知識や技術の構築を目指して行政やメーカーと協働するという意味です。学んだことがプロジェクトの後にも活かされ、今後行政やメーカーがつくる新しい施設すべてに応用されるようにとの狙いがあります。このコンセプトについては、次の質問でお答えしましょう。
Q: 公園のつくり手側(自治体や設計者、メーカーなど)には、従来よりもずっと革新的な考え方やアイデアが求められたことと思います。プロジェクトでは、どのような手法をとったのですか?
A: 上で触れたように、地方行政や産業界に「学びと発展をもたらす」ことは、すべての子どものための遊び環境をつくる上で重要なコンセプトです。ここが参加型デザインプロセスの優れた点なのですが、子どもたちや家族を巻き込むのと同等に、行政や設計者、企業も巻き込んでいるのです。協働しながら、お互いを尊重し、お互いから学び合うことは、成功のために不可欠な要素です。
地方行政や産業界に「学びと発展をもたらす」ために、様々な方法や技術を用いました。まず、知識や技術の促進を助ける仕掛けとして『QAAPPデザインフレームワーク』を作成しました。このフレームワークの目的は次の3つです。1)子どもたちや家族が従来型の公園で直面しているバリアに対する、行政やメーカーの認識や理解を引き出す、2)参加型アプローチを明確にし、それを一般的なデザインプロセスにどう適用するかを示す、3)パイオニアパークでの事例を提供する。
デザインフレームワークは、プロジェクトチームや他の専門家による継続的なサポートと知識の提供を得ながら、次のように補強されました。
参加型アプローチと取り組み
継続的なサポートとして、次のようなものがあります。行政に対して提供したのは、取り組みのための技術やツール(例:すべての子どもが広く利用できるコミュニケーションシンボルを取り入れた公園デザイン活動ブック)、フレームワークの使い方の訓練、参画を進める援助、取り組みのためのストラテジー等です。また公園のステークホルダーのためのワークショップやアクティビティを行ったり、具体的な手法でスタッフを養成するため、遊び場での観察調査も実施しました(プロジェクトで遊び観察に参加した景観設計者イアン・ベントレイさんの感想は
こちら)。さらにスタッフには、地域からの情報を分析し、地域の特徴をまとめる指導を行いました。
複雑なニーズをもつ子どもの遊び経験をよりよいものにするために、デザインを向上させる継続的なサポートが行われ、バリアやデザインの欠点に対する解決策を生み出すべく、業界と行政が連携して働きました。例としては、州をまたいだ遠隔会議方式での電子講義で、クライブ・ドッドさん(専門技師、都市計画立案者)による遊び場のデザインと安全性に関する2日間の教育ワークショップの開催、遊び環境を高めるデザイン解決策の提供、クライブさんの協力を仰いでの図面の評価や、問題が確認された場合の技術的解決、行政とピアサポートとの間の学びや情報共有プログラムの策定、デザインの詳細について助言を得るための地域の理学療法士や作業療法士の活用などです。
Q: QAAPPでは、利用者の参加が大きな鍵でした。地域住民は、このプロジェクトにどのように携わったのですか?
A: それぞれの自治体では、新しい遊び場が住民の希望を反映したデザインとなるよう、プロジェクトチームのサポートを得ながら、地域を包括的に巻き込むストラテジーを開発することが求められました。そして地域住民の参加を可能にし、各ストラテジーがうまくいくには、多様な方法と機会の提供が必須要素でした。なぜなら、住民は一人ひとり異なり、違う好みをもち、自分の考えやニーズ、嫌なことを自分の望む方法で表明したいと思っているからです。例えば、子どもたちからは、アクティビティ中心の手法の方がよい反応が得られますし、意思の伝達における障害をもつ人々は、自分の意見を表す独自の方法をもっている場合もあるので、私たちはそれを可能にする必要があります。
取り組んだプログラムは、おもに次のような活動や手法を組みわせたものです。重要なステークホルダーに焦点を当ててのグループインタビューや1対1のインタビュー、地元のあらゆる小学校(州立、私立、特別支援教育グループ、特別支援学校を含む)でのスクールワークショップ、子育てグループや教師、親のグループなど特定の対象者に向けて開いたワークショップ、仕上げとして地域のすべての学校で子どもたちのために実施された「マイプレイグラウンドデザイン」:住民からのフィードバックに即してデザイン計画の改良を目指すためのデザインワークショップなど。これらの多様な手法によって、地域の人たちは、自分たちの遊び場の計画や設計に直接関わることができました。
地域を巻き込むことの重要性について、次の人たちが率直にこう表現しています。
「私たちが参加して、これが有効だとか、これは駄目だとか言うことなしに、どうやって私たちの求めていることをわかると言うのでしょう? それを利用する人を参加させないで物をつくるなんて無理です。だって、私たちが言ったり、要求を出す機会を得たりしないままでは、私たちの望みは誰にもわからないんですから」(ジョアン・アーガイルさん、車いす利用者、ピアルバ シーフロントのAAPづくりに参加。
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「このように大きなプロジェクトでは、様々な人の意見や考え、体験をたくさん聞いて、反映させる必要があると思います。異なるグループや、いろいろな声――みんなのアイデアをいっしょにするんです」(ジェニーさん、アンブレラグループから、サーインゴワ リバーフロントAAPづくりに参加した母親。
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Q: オーストラリア同様、日本でもインクルーシブデザインに対する認知が広がりつつあります。しかし子どもの遊び環境に関して言えば、その道のりはまだまだ遠いと言えます。何かアドバイスやご提案はありませんか?
教育と積極的支援が鍵! 私は、変化を引き起こすための実地のサポートや経験を通して知識や技術を生むのが一番だとわかりました。障害の有無を問わないすべての子どもにとってチャイルドフレンドリーな環境をどうつくるか、産業界ではほとんど理解されていないのです。
妥協しないこと。 決定に際しては、常にすべての子どもが最優先に考えられなければなりません。妥協はしばしば、子どもにとって遊ぶ権利の喪失を意味します。車いすに乗っている子どもも、立つことができない子どもも、同じ遊びの機会と選択肢が与えられるべきです。前にも述べましたが、「すべての子どもが遊べる」とは、障害や年齢など多様な子どもたち皆に、いろいろなタイプの遊びを体験できる機会と選択肢が提供されるということです。これは、様々な人工物や自然の体験によって達成されると思います。Q: Lisaさんのご協力のおかげで、QAAPPから多くを学ぶことができました。みなさんの素晴らしい実践や資料は、これから他の地でもきっと様々な人の助けになることと思います。
最後に、Lisaさんにとって、この分野での今後の課題は何ですか?
A: プロジェクトを終えての課題は、遊びにおける安全性とアクセシビリティについて両者の技術仕様にギャップがあり、産業界には規定がないことです。どちらもプロジェクトの間ずっと大きな難題でした。今年(2011年)、建築基準法に公共的施設へのアクセスが盛り込まれることとなりましたが、これは障害をもつ子どもたちが特に必要としている遊び環境へは適応されません。子どもたちのために、遊び場や近隣の小道や通りを含む都市空間を、オーストラリア全土で変えていくべく、これからも提唱を続けていく必要があります。私のもう一つの課題は、自分の知識をより多くの人と共有し、新たなツールやリソースを開発するための資金提供が得られる機会を見つけることです。オールアビリティズプレイグラウンドを、オーストラリアで、そして世界のあちこちでつくる手助けをしたいのです。
リサ・スタッフォードさんにご質問のある方は、メールでご連絡を。
メールアドレス: lm.hand
student.qut.edu.au

