ニーズを知る「利用者調査」

視覚障害のある子どもたちと公園(2)

視覚障害児のお母さん、視覚障害者、盲学校の先生たちの声

<位置を知るための工夫>

○「視覚障害者には何もなく広い平面が安全」と思われがちだが、広場の真ん中などでは自分がどこをどちらへ向いて歩いているのか見当がつかず、かえって怖い。位置を知るための工夫が大切。

★公園のどこに何があるのかを示す触地図について
○表面に凹凸加工が施された触地図を指で触って、頭の中で地図として把握することは、大人の視覚障害者でもなかなか難しい。(個人差はあるが。)

○触地図を触って空間認知をできる人は限られるが、無いよりはあった方がましかも。遊具の大まかな配置がわかるだけでも役に立つ可能性はある。

○平面図にわずかな凹凸をつけた地図より、公園のミニチュアのような立体模型の方が、少しはわかりやすいと思う。模型なら、他の子どもも見たり触れたりして楽しめるのではないか。

★手すりについて
○園内に手すりを設ければ誘導の手がかりになる。ただし、子どもが手すりにぶつかる危険もあるので、どこにでもたくさん付ければよいわけではない。

★地面が手がかりになる!
○地面に点字ブロックや突起したラインを敷設して誘導するのが有効ではないか。

○子どもの遊び場に、駅や町にあるような点字ブロックを敷くことには疑問を感じる。大人と違って幼い子ども(視覚障害児を含む)には、点字ブロックによる「誘導」や「注意喚起」の概念はない。よちよち歩きの幼児や車いすに乗る子どもにとっても、点字ブロックの突起はじゃまになるのではないか。

○地面の感触の違いが有効な手掛かりになる。芝生、土、ウッドチップ、ゴム製の地面など、場所によって地面の素材を変えれば、足の裏の感覚で通路やエリアの区別を認識できる。

★音が手がかりになる!
○子どもがどうやって目的の遊具にたどりつくかが大きな問題。一部のビルの入口で「ピンポーン」と音がしているように、メインの遊具(たとえば複合遊具の上り口など)で音が鳴っていれば、そこを目指して行けるのでよい。

○敷地内で常に音がしている箇所(噴水など)があると、たとえ別の場所にいても、音の方向や大きさを頼りに、自分の位置をある程度判断できるのでよい。

○踏むと足元から音がする仕掛けがあると、位置を認識する手がかりにもなるし、楽しそう。

★色が手掛かりになる!
○全盲の子どもより弱視の子どもの割合のほうが圧倒的に多い。地面にコントラストのはっきりした色でラインが書いてあるだけでも、誘導のための手がかりになるだろう。

○公園の地面を、「通路」、「複合遊具エリア」、「ブランコエリア(ぶつかる危険がある場所)」というように色分けしてあれば、親が子どもに「何色の所で遊んでいいよ」などと教えやすいし、子どもも理解しやすいのではないか。
(ちなみに、弱視のわが子が色を覚えるのに公園が役立った。家にある物は小さいのでわかりにくい。公園で大きな物を示して色を教えると、子どもが理解しやすかった。
視覚障害のない子どもにとっても、公園なら遊びを通して色を学べるし、「色おにごっこ」など色を生かした遊びも楽しめる。あまりカラフルだと混乱するが、有効な色の使い方というのがあるのでは?)

○歩道やデッキの床と、それに続く吊橋や階段(特に下り階段)が同じ色の場合、気付かずに平面だと思って歩いてしまい、突然怖い思いをしたり、時に転げ落ちたりする。これは弱視の人だけでなく、高齢者や、視覚に障害のない人にとっても起こりうるだろう。
高さが変わる部分や段差がある場所は、床や地面の色を変えるなどして目立たせてほしい。

○複合遊具の床も、「デッキ部分=平面で遊べる場所」と、「吊橋や階段、スロープ部分=渡る場所」といった一定の基準で色分けすると、わかりやすいのではないか。

○見えやすい色と見えにくい色には個人差があるため一概には言えないが、コントラストをはっきりさせることがとても大切。ブランコエリアを囲む黄色い柵も白っぽい地面では見えにくかったり、鉄棒の色が背景の生垣と同化してしまったりして、気付かずぶつかることがある。

★ICタグの活用
○(将来的な話かもしれないが、)各遊具やポイントとなる場所ごとにICタグを貼っておき、端末を持った視覚障害者が近付くと自動で音声情報が流れ、場所を説明したり危険を知らせたりすることも可能ではないか。

★コンパクトでわかりやすい配置を!
○親が視覚障害者である場合、あまり広い公園では自分(親)が怖くて歩けないし、子どもの状況がつかめないので不安。そのため子どもを大きな公園に連れて行く気になれず、保育園の園庭などで遊ばせることが多かった。ある程度コンパクトで空間認知のしやすい公園がよい。

○遊具が広い園内に転々とあるより、広場を囲むように並んで配置されていた方がたどり着きやすいし、公園の全体図も覚えやすい。(たとえば、入口からフェンスに沿って右側が砂場、その次はブランコ、その次が複合遊具・・・というように)

★自分の行きたい所に、自分で行ける楽しさを!
○視覚に障害がある子どもは、自力で遊具にたどり着くことが難しい。しかしガイドとなる適切な工夫さえあれば、付き添いなしに一人でどこにでも行ける。自分で遊具を選んで、自由に移動し、のびのびと遊ぶ楽しさを味わわせたい。

(それぞれのご意見を下さった皆様、ありがとうございます)

イラスト:公園で楽しそうに遊ぶおしゃれで多様な女の子達。滑り台は、友達がロープを引くと、車いすからシートに移乗した女の子が上がっていく仕掛け付き。他にも楽器を鳴らして遊ぶ制服姿の二人組など(一人は白杖を持っている)
イラスト:「みんなの公園」 千尋さん