No.30 公園訪問inサンノゼ・アメリカ(前編)
ロータリー・プレイガーデン カリフォルニア州は、アメリカでもっともUD公園づくりが盛んな地域の一つ。
例えばサンフランシスコ近郊では、車で1~2時間圏内にいろいろなタイプのインクルーシブな遊び場を見つけることができます。
今回はその中から、2015年に開園したサンノゼのロータリー・プレイガーデンをご紹介します。
何より特徴的なのが、遊び場のレイアウトと立地です。まず、Googleマップで上空から見たロータリー・プレイガーデンをどうぞ!
外周園路は直径70メートルほどの大きな円形で、その中心を貫くように主要な遊具が一列に配置されています。ちなみに外周の地面は南の駐車場側が徐々に高くなるよう土手が築かれているので、円い園路は緩やかなスロープルートでもあります。
さらに地図をズームアウトしていくと、北西方向に滑走路が見えてきます。
そう、この遊び場はサンノゼ国際空港に隣接し、しかも滑走路の延長線上に位置しているのです!
いったいどんな遊び場なのでしょう。さっそく入り口へ向かいます。
遊び場は、開園時間が10時~16時(夏期は18時半)まで、月曜日は休園ということで、門扉があります。草や鳥の姿が切り抜かれた遊び心あるデザインですね。
ゲートをくぐると、さっそく頭上を飛行機が降下していきました。結構な音と迫力!
しかもわりと頻繁に通過するので、音が苦手な子どもには少し過酷ですが、飛行機好きの子どもには夢のような遊び場です。頭上の飛行機と競争するように、「キャ~~~!」とはしゃいで駆ける小さな子どもたちもいましたよ。
遊び場へと抜ける土手の切り通しの両壁には、魚や虫、鳥などの大きなレリーフと、この遊び場づくりに寄付をした個人や団体の名前がたくさん刻まれていました。
この遊び場はロータリークラブ・サンノゼの活動百周年を記念し、600万ドルをかけてつくられたそう。(当時のレートで約7億3千万円!なかなかの規模ですが、土地の造成やオリジナルの作品の多さも関係か)
「障害のある子どももない子どもも一緒に遊ぶことで、学び合い育ち合ってほしい」という願いに多くの人が賛同し協力したことがうかがえます。
このエントランスを抜けると、一気に視界が開けました。
さっそく正面の水遊び・砂遊び場から見ていきましょう!
こちらが水遊び場。 車いすや歩行器の子どもも水に触れやすいよう高くレイズされていますね。
右の一番高いテーブルの縁にあるボタンを押すと、イモリのオブジェ付きの球体から水が流れ出ます。
徐々に低くなる水路の途中には、渦巻きのテーブルがいくつも。
その内3ヵ所のテーブルには壁にボタンがあり、押すとそれぞれで水が流れ出る仕掛けです。蛇口が上流の1ヵ所だけだとそこに子どもが集中しがちですが、これならみんなが楽しみやすいですね。
視覚に障害のある子どもも触って認識できる多種多様な魚のレリーフで彩られた壁も印象的です。
こちらはその隣にある砂遊び場。
3段階でレイズされ、一番高いテーブルには車いすのまま接近しやすいよう蹴込みがある他、縁や角をすべて丸くするなどとても丁寧なつくりです。
中央にはリアルな蜂のオブジェもありますね。
ただ肝心の砂がない! 残念ながら今日来た子ども達は、砂遊びはお預けです。
じつはこれ、レイズド砂場では起こりがちな現象…。
子どもは自由な遊びの中で、砂を水路に運んで泥遊びに発展させたり、ただ下にどんどん落としてみたくなったりするものです。(水路や地面に砂が散らばっていますよね)
砂場のUD化にはいくつかの方法がありますが、ここの場合は地面の砂場を追加するとよいかもしれません。撒かれた砂を管理者がそこへ簡単に掃き戻したり、利用者が下の砂をバケツなどですくってレイズド砂場に補充したりできるので、「今日は砂遊びはお預け」が起こりにくくなりそうです。
さて、ここから水色の園路をたどって奥に進むと、UD公園でおなじみの回転遊具が並んでいます。(車いすのまま乗り込めるタイプや、ネットを張った円錐形のタイプなど)
地表面材は、園路がセメント(遊び場を流れる川のイメージで、所々に魚のレリーフも)。周囲はゴムチップ舗装で、基本カラーがベージュ、縦に並んだ各遊具の周りは青です。
遊びエリアの近くには、美しい植栽や岩が配されている他、カエルや鳥などのリアルなオブジェがあちこちに。
また腰掛けられる場所が多いのも、子どもを見守る大人にとって嬉しいポイントですね。
そして一番奥には、トランポリン!
周りに支柱とロープが張り巡らされた特徴的な形です。
写真は、小さな男の子が懸命にロープをまたいで中にたどり着こうとしているところ。障害のある子どもなどには、ちょっとアクセスしにくいのが難点です。
ただ、一度入ればいつまでも跳んでいたくなる人気の遊具で、「帰る時間になると、子どもをここから引っ張り出すのが大変(笑)」というお母さんの声も。
さて、公園を貫いて並ぶ青い遊具エリアの両脇には、こんな遊び場もありますよ!
まずはブランコエリア。
手前からバケット型、背もたれと安全ベルト付きのシート型、日本でおなじみの平板型(アメリカでは柔らかいベルト型が一般的)、そして一番奥は寝転んでも複数でも乗れる皿型です。
その中には、一人がこぐともう一方も揺れる仕掛けのブランコもありました!
ここでは2つとも平板型でしたが、一方をシート型にすると、障害などのために座位を保つことが難しい子どもも、きょうだいや友達と一緒にブランコを楽しみやすいですね。
さらに音遊びエリア。
こちらは、マレットで叩いて鳴らす金属製のチャイム。
そしてこちらの円柱は、回すと中からウィンドチャイムのような音がする仕掛けです。 (Goric Playgroundsの紹介ビデオ)
反対側には、ロープやベルトが張り巡らされたアスレチック系の遊びエリアも! 種類や難易度の異なる遊び要素が連なっているので、子どもが自分なりのチャレンジを次々としたくなる場所でした。
それに右の低めのネットは、車いすなどからも移乗しやすい高さ。
自分でネットをよじ登ったりロープを渡り歩いたりが難しい子どもも、ここに寝転んで遊びの輪に加わったり、友達の動きでネットの揺れを楽しんだりできそうですね。
さあ、次回はここから奥へと進み、大きな弧を描いて延びる外周園路のスロープを上っていきます。 後編をどうぞお楽しみに!