ニーズを知る「利用者調査」

障害のある子どもたちの支援と公園(4)

障害児通所支援事業に携わる方たちの声

(回答者は放課後等デイサービスや児童館、障害児と家族の支援グループ
等の運営者の方々。ご自身が障害のある子どもの親である方も含みます)

<障害のある子どもや家族はなぜ公園に行きづらいか>

○まずどこに出かけるにしても、車いすを自動車に積んだり多くの荷物を持参したりしなければならず手間がかかる。また行った先に障害者用の駐車場や多目的トイレがあるかなど気掛かりも多いため、家族で出かける機会は減っていきがち。

○聴覚障害のある子どもを遊ばせる場合、親が危険を察知して呼びかけても本人に聞こえないという不安などから、公園にはほとんど出かけないというケースもある。

○発達障害のある子どもを追いかけて親が常に走り回らなければならず、くたびれてしまう。最低限の安全が確保された遊び環境があればよいのだが。

○特に自閉症などは外見からはわかりにくい障害のため他の人に理解されにくい。楽しいと大きな声が出たり、特徴的な言動をとったりすることが周りの子どもや大人を驚かせてしまうことが気がかり。

○施設で公園に行く場合と違って、家庭で障害のある子どもを連れて行くには、親が「遊ばせるぞ!」という相当の覚悟をもって臨まなければならないのだろう。通常の、「子どもを公園で遊ばせながら親がのんびり見守る」というのとは異なり、子どもから一瞬たりとも目が離せなかったり、自分も走り回らなければならなかったりするため、親には大きなストレスがかかりがち。

○発達障害のある子どもは、身体的な障害がなくても完全に目が離せないことが多く、気をつかう。おそらく親が一番安心できるのは、障害児施設などの敷地内にUDの遊び場があることではないかと思う。それでは他の子どもとはかかわれないのだが……。

○公園は小さい子ども向けの遊び場が多く、障害のある大きな子は目立ってしまう。本人は楽しみたくても、親は連れて行きづらい。

○子ども自身は遊びたがるのだが、小学校高学年になった頃から公園に行かせることを躊躇している。そもそも遊具が大きな子どもの利用に耐えられる構造なのか不安。また周りに小さいお子さんが来れば体格差で危なかったり、怖がらせたりしてしまいそう。

○年齢が上がるにつれ、障害のある子どもを公園で遊ばせることがはばかられ、親は家でDVDなどを見せて過ごさせるようになりがち。子どもは運動不足から肥満になってしまう。

○障害のある子どもときょうだいを連れて出かけても、母親一人ではどちらかにしかつけない。障害のある子どもにつきっきりでいると、きょうだいが「ママ見て!こんなことできたよ!」と声をかけてきても、「ごめん!今それどころじゃない」となってしまう。反対にきょうだいが楽しめる所に行けば、障害のある子どもはただ座って見ているだけしかできない。どちらもつらい。

<社会で感じる「障害者に対する壁」>

○「できれば障害のある子どももない子どもも一緒に」とは思うが、障害児に理解がない人もいる。

○一般の人は、車いす利用者や白杖を使う視覚障害者などと直に接する機会がほとんどないため、たとえ悪気はないとしても、障害者に対して初めから距離を置いたり壁を作ったりする傾向がある。

○障害のある子どもの親は、日ごろから周りの人に「すみません」「すみません」と頭を下げることが多い。開き直れる人もいるが、特に若いお母さんなどは、社会に対して尻込みしてしまいがち。子どもの障害を隠したがる人もいる。「周りの人に何か言われたり、後ろ指を指されたりするのでは?」と思うと、外に出かけづらい。一度いやな思いをすると、母親たちはもうそこへ行かなくなってしまう。

○長距離の歩行が困難でバギーに乗っている子どもに対して、「こんな大きな子どもが何で?」と批判的な言葉や視線を浴びることが多く、地下鉄でも肩身が狭く席も譲ってもらえないので、タクシー移動が多い。こういう子どももいることをもっと社会の人に理解してほしい。

<壁をなくし、子どもも大人も変わるために>

★公園
○他の人とかかわることは障害のある子どもにとっても大切で、公園はそのための重要な体験の場。自宅の庭に遊び場をつくっても、誰かと出会ったり、けんかをしたり、謝って仲直りをしたりする経験は得られない。

○UD公園をつくるなら、車いす利用者だけでなく発達障害などいろいろな特性を持った子どもが来るということを周りの人にしっかり知らせて、理解を広めてほしい。

○障害のある子どもとない子どもがただ同じ場所にいるだけでは仲良くなれないこともある。子どもたちの橋渡し役として、障害への理解を持ち、前向きなかかわり方や対応ができる大人/プレイリーダーがいてくれると嬉しい。

○ここに行けば理解のある人がいてくれ、子どもたちは遊ぶことができるし、母親同士は話ができる――そんな場所やプレイデイなどのイベントがあると、公園に出かけやすい。

○時折、遊び場の横で、車いす体験など障害への理解を広めるプログラムを行ってもよいのでは?

★子ども
○娘は毎日のように近所の公園に行く。知らない人からは、「ダウン症の子どもを一人で滑り台なんかに登らせて…」と心配されることもあるが、昔から知っている近所の子どもたちは娘に気軽に声をかけたりかかわったりしてくれる。年齢が低い時から、子どもたちが自然に交流できる場があることは大切。

○子どもは、発達障害のある子どもにズバッときつい発言をすることもある。またルールを理解できず守れない子どもに対して、他の子が「なんで!?」と怒ることもある。だが、幼い頃から障害のある子どもと付き合いのある子たちがそうした場面にうまく対応し事態を収めるケースは多い。そんな子どもの様子から、他の子どもたち(大人までも)が「なるほど」と教わっている。

○私は、人から娘の障害について尋ねられると嬉しい。障害の特性やバギーを使う理由などを理解してもらうよい機会だと思うから。特に、障害者に対する偏見や先入観を持つ前の、心や頭が柔らかい子どもたちの方が、違いを感じながらも相手を理解する優しさを持っている。その意味でも、小さい時から多様な子どもが一緒にいられる場があることはとても重要。子どもたちにこそ学んでほしいし、親である私たちも教えたい。自分の子どもも障害のない子どもも、遊びや人とのかかわりを通して一緒に育ち合ってほしい。子どもが学ぶべき人としてのマナーやルールは、障害のあるなしにかかわらず共通のはず。

★大人
○障害のある子どもの家族が進んで外へ出かけ、かかわりを広げていかなければと思う。発達障害やぜんそく、内部障害など、外見だけではわからない障害もある。周囲の人と直接出会いかかわることで、社会に多様な人への理解が広がり、子どもを見守ったり声をかけてくれたりする人も増えるはず。

○大人が障害のある子どもを囲い込んで「大事、大事」と特別扱いしていては、いつまでたっても社会はインクルーシブになれない。インクルーシブな社会づくりのためには、いろんな人が出会い、お互いに声をかけあう関係を築けるような場が必要。

○障害のある子どもに対して母親が一人で向き合い過ぎ、過剰に手をかけていることも。「この子にこれはできない」といった親の思い込みが、子どもの発達の可能性を閉ざしている場合がある。一方で、デイサービスやヘルパーなどのサービスに頼り過ぎ、子どもの外での様子や友達、その親たちなどを知る機会が少なかったり、子どもと向き合う意識が低かったりする親もいることが気がかり。週末などに親子で気軽に出かけ、他の人ともかかわりながらリラックスして過ごせる場所があるとよい。

○最近では障害児のデイサービスを利用している家庭が多い。同じような子どもと過ごせたり、その子向けの対応がされたりする点で、親にとっては安心感があると思う。一方で、幼少期から健常児と障害児が分かれた環境ばかりというのはどうか。発達障害の診断を受けた子どもの保護者の中には、「うちの子は別だから」という意識が強くなり、本来ならば子ども同士の小さなけんかで済むようなことでも、すぐに「いじめられた!」と捉えるなど、自らネガティブな考え方に偏ってしまうケースも。これでは、親も本人もしんどくなってしまう。多様な子どもたちの柔軟なかかわりを目にすることで、親同士の理解が進む部分もあるのでは?

○自分もそうだが同じ障害を持つ子どもの親や関係者ばかりで集まると、変に開き直るというか態度が大きくなってしまうことがある。その点、いろいろな障害種別の人や障害のない人など「みんな」が集まってUD公園づくりに取り組むというのは、お互いに一人ひとりを尊重するという原点に立って考える良いきっかけになる気がする。

○もしUD公園づくりの機会があれば、私たちもぜひ参加したい。

(それぞれのご意見を下さった皆様、ありがとうございます)

イラスト:赤い背もたれ付きのブランコと笑顔の女の子
イラスト:「背もたれ付きのブランコ」